ブログ 7 November 2021 < 1

ロボットデジタル検査のための
ビジュアルSLAM

インダストリー デジタルエンジニアルング

SLAM技術の概要

VSLAM(Visual Simultaneous Localization and Mapping)は、組込ビジョンに欠かせない技術として発展しており、さまざまな応用が考えられる。様々な場面で大きな可能性を秘めているにもかかわらず、商業的な観点から見ると、VSLAMは技術的にはまだ初期段階にとどまっている。今、将来のデジタル検査におけるVSLAMの役割が注目されている。ロボットによるデジタル検査は、VSLAMを使った革命的かつ潜在的な、産業アプリケーションの一つである。

まず初めに、過去10年間のVSLAM技術の進化と現在のトレンドをみてみよう。ロボット工学の世界では、VSLAMの研究は何十年も前に始まった。そして幾何学モデルに基づいた手法が、より洗練され、正確さを増すにつれ、その技術は大きな進歩を遂げてきた。しかしVSLAM技術で正確な結果を出すには、整った環境が必要である。近年、開発コミュニティでは、VSLAMをディープラーニングのようなアプローチで補強し、ビジュアル検査の問題を改善して、より正確な結果を得るための取り組みがいくつか行われている。

ロボットによるデジタル検査とVSLAM

ボットによる検査は、作業の効果と効率を改善し、作業員の労働負担を軽減する。ロボットが検査作業を行うためには、正確で安定した位置決めとナビゲーションが不可欠であり、SLAMは、未知の環境の3次元構造と、その環境内で動くセンサーのマッピングを支援する技術である。SLAMはもともと、ロボット工学においてロボットを自律制御するために考案された技術である。ビジュアルSLAMは、センサーの周囲の環境をマッピングすると同時に、周囲に対するセンサーの位置と向きを決定する。

VSLAMの進化

SLAMの初期の研究では、オドメトリや超音波センサーでロボットの位置情報を得ていたが、1990年代に入ると、移動ロボット分野ではSLAM、コンピュータビジョン分野ではSfMの研究がそれぞれ独立して発展し、まったく別の技術として確立した。こうした中、2000年代初頭、A.Davisonによって、視覚をSLAMに取り入れるという画期的な研究が発表された。「Mono-SLAM」である。

その後、パラレルトラッキング&マッピング(PTAM)が、ロボットの自己定位に必要なトラッキングとマッピングの新しい標準となった。PTAMは、小さな局所空間では十分に満足のいく結果を得ることができたが、大規模なマッピングは不得手であった。この問題を解決する鍵は、「効率的なマップの表現と改良」と「ループ閉じ込み」である。ループ閉じ込みの処理を良好に行うためには、効率的なマップの表現と改良が欠かせない。

(Reference from web, source acknowledged)

その後登場したのが、より伝統的な特徴点ベースのORB-SLAMである。ある意味、PTAMに似た技術だが、実践で素晴らしい成果を上げた。ロボット工学やコンピュータビジョンが一般的な研分野になるにつれ、VSLAMは多くの研究者を魅了するようになった。彼らはVSLAMの改良にエネルギーと知性を注ぎ、その成果をコミュニティで共有するようになった。

SLAM技術にはいくつかの異なるタイプがあり、中にはカメラを全く使わないものもある。VSLAMは、環境もセンサーの位置も不明な状態で、3Dビジョンを活用して位置情報やマッピングを行うSLAMシステムである。VSLAMシステムは、さまざまなフィールドロボットにも採用されている。例えば、火星を探査するローバーや着陸船は、VSLAMシステムを使って自律的に航行する。また、農業分野のロボットやドローンにも同様の技術が使われており、畑を自律的に移動している。

SLAM技術にはいくつかの異なるタイプがあり、中にはカメラを全く使わないものもある。VSLAMは、環境もセンサーの位置も不明な状態で、3Dビジョンを活用して位置情報やマッピングを行うSLAMシステムである。VSLAMシステムは、さまざまなフィールドロボットにも採用されている。例えば、火星を探査するローバーや着陸船は、VSLAMシステムを使って自律的に航行する。また、農業分野のロボットやドローンにも同様の技術が使われており、畑を自律的に移動している。

VSLAMの最近の動向

外部環境のテクスチャ情報が豊富であることから、最近は、VSLAMに注目が集まっている。視覚的なセンシングは、センサーのノイズや周囲の明るさ、急激な動きによる画像の劣化といった多くの課題を抱えており、さらなる技術的発展が必要である。コンピュータビジョン技術の発展に伴ってVSLAMの技術も進歩し、屋内ナビゲーションやバーチャルリアリティ/拡張現実などの分野での応用が進んでいる。最近では、画像情報を増やし、他のセンサーとのデータ融合を行うことで、SLAM技術の堅牢化をを追求している研究者もいる。新しいSLAM技術は、複雑な環境下での正確な位置決めやマッピングに応用できるだろう。

ビジュアルSLAMの最新動向:                                                                                                                                                                      

● ディープラーニングを用いたビジュアルSLAM
● 複雑な環境で堅牢な結果を得るためのマルチセンサーフュージョンSLAM
● 複数の視覚的特徴の抽出とマッチング
● 誤差を最小化し正確な結果を得るダイレクトSLAM手法

業界の応用シナリオ

エネルギー需要の増加に伴い、石油・ガス会社は効率、生産性、安全性の向上を求めている。生産設備、貯蔵設備、輸送設備に腐食や亀裂が生じた場合、社会や自然環境に災害をもたらす恐れがある。多くの石油・ガス資産は過酷な環境下にあるため、費用対効果が高く、正確で、安全性の高い検査作業を行うロボットの需要が高まっている。石油・ガス産業におけるデジタル検査にVSLAMが導入されたことにより、自律型水中ビークル(AUV)や無人航空機(UAV)の自律的な定位とナビゲーションの性能は飛躍的に向上した。

実用化への課題

デジタル検査の領域では、検査作業を正確に行うために、ロボットをできるだけ施設に近づける。ロボットの周囲が速いスピードで変化するため、動的な環境を知覚し、リアルタイムに反応する機能の向上が、デジタル検査タスクを実用化する上で克服するべき重要な課題となっている。

事前にカメラ(センサー)の位置と周囲の環境の情報がない状態で、双方を感知することは技術的に極めて難しい。VSLAMシステムは、この課題に取り組む上で非常に効果的であり、組込型ビジョンの中でも最も洗練された技術の一つとして浮上している。コンピュータビジョン、デジタル画像処理、AIの進歩で、視覚ベースのSLAMの性能はますます高まっている。

まとめ

今の実用上の課題は、複雑な環境下で、環境のテクスチャや照明の変化の影響をうけずに正確に定位し、堅牢なマッピングを行うことである。困難な環境下で、VSLAMが、実用に必要な精度をもつ堅牢なポジショニングとマッピングを行うため、デプスカメラと他のセンサーの組み合わせが検討されている。しかし商業的なシナリオに沿わせるためには、現在のVSLAMのアルゴリズムを大幅に変更する必要がある。VSLAM技術の進歩と他のコンピュータビジョン技術やセンサーデータとの組み合わせにより、VSLAMは近い将来、デジタル検査アプリケーションにおいて重要な役割を果たすことが期待されている。

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